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小児の腎機能不全

腎臓の働き

腎臓は、1) 老廃物の排泄、2) からだに必要な水分や塩分・電解質の調節、3) からだの酸・アルカリ平衡の保持、4) 血圧調節、赤血球産生、そしてリン・カルシウム調節を行うホルモンの産生・活性化など、生体内部環境の恒常性維持に重要な働きをしています。

急性腎障害(AKI: acute kidney injury)

概要

AKIは、急激な腎機能の低下によっておこる高窒素血症(こうちっそけつしょう)を主徴とする病態です。表に示したさまざまな原因で発症します。腎機能の低下に伴い窒素化合物の蓄積、水・電解質の異常、酸・塩基平衡の破綻が生じ、いろいろな臨床症状が出現します。そのうち、うっ血性心不全、肺水腫、高血圧、高カリウム血症、低ナトリウム血症、代謝性アシドーシス、けいれんなどがとくに問題となり、迅速かつ正確な診断と適切な治療を必要とする救急疾患です。

診断

AKIの治療では、障害部位(腎前性、腎性、腎後性)を鑑別しながら原因疾患の検索を速やかに進めることが大切です(表:ここをクリック)
小児のAKIでは、年齢によってその原因疾患が異なることが特徴です。新生児期では腎虚血や先天性腎尿路奇形が、乳幼児期では溶血性尿毒症症候群(HUS)が主な原因で、学童期以降には腎炎によるAKIも問題となってきます。さらに新生児期から乳幼児期にかけては、重症感染症(敗血症)や脱水症もAKIの主要な原因の一つです。なお、HUSは、破砕状赤血球を伴う溶血性貧血、消費性の血小板減少、AKIを三主徴とする症候群です。さまざまな原因で発症しますが、小児のHUSの約90%は志賀毒素(別名、ベロ毒素)産生腸管出血性大腸菌(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん)感染によるものです。

治療

AKIと診断したら、まず生命の危険につながる重篤な合併症(肺水腫や高カリウム血症など)に対して緊急処置を施す必要があります。また、腎前性(腎血流量の減少)、腎性(腎実質の障害)、腎後性(尿路の閉塞)のいずれであるかを特定し、原因に対応した治療、例えば、尿路の閉塞による腎後性AKIの場合には、泌尿器科的治療が必要です。さらに、急性血液浄化療法(血液透析や腹膜透析)を必要とする場合があります。

慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)

概念

CKDは、さまざまな原因による不可逆的な腎機能障害による代謝異常、生理・内分泌機能異常による多彩な臨床症状を包括した症候群です。

臨床症状

腎臓の排泄機能、体液調節機能、内分泌機能の障害によって、(ここをクリック)に示したさまざま臨床症状を呈します。小児では、成長障害が問題となります。

原因疾患

小児の特徴は、原因疾患として、先天性腎尿路奇形(congenital anomalies of the kidney and urinary tract: CAKUT)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis : FSGS そうじょうぶんせつせいしきゅうたいこうかしょう)、遺伝性疾患などが多いこと、さらに、多彩な腎外症状を認める奇形症候群が少なからずみられることです。
CAKUT(カクートと呼びます)は腎尿路の形態異常を先天的に有する症例を包括した概念で、腎形成異常(低・異形成腎)、尿路通過障害、膀胱尿管逆流(逆流性腎症)、重複尿管などが含まれます。日本を含む先進国では、小児末期腎不全患者の原因疾患としてCAKUTが最多です。また、FSGSは小児において最も頻度が高い難治性のネフローゼ症候群(高度蛋白尿の持続、低アルブミン血症、浮腫を呈します)です。

小児末期腎不全治療の動向

1965年(S40年)に本邦において初めて小児末期腎不全患者に対して透析療法が導入されてから約50年近くが経過しました。この間の透析療法(腹膜透析と血液透析)や腎移植、さらに薬物治療の進歩はめざましく、いまや小児末期腎不全患者の延命のみを考える時代は完全に過ぎ去りました。現在は、健常児とかわりなく心身ともに健やかに育ち、自立した社会人となることが治療目標です。

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