小児の排尿機能発達・尿失禁症
赤ちゃんは、まだ何も教えていないのに、排尿や排便をします。排尿回数は、新生児では1日約20回もあります。排尿の働きは未熟で、回数が多いが1回の排尿量は少ないことがわかっています。しばしば、尿の一部が膀胱に残っている(残尿 ざんにょう)こともあります。
1歳くらいになると、尿が貯まった感覚がわかるようになります(当然ですが、「尿意」であるとは自覚できません)。
2-3歳になると、尿をまとめてしっかり出すことが可能になり、1日の排尿回数が6-8回程度になります。
残尿もないか少なくなります。しかし、多くの子どもは、この頃は昼夜ともにまだオムツが必要です。
なぜならば、尿意を感じたとたんに、反射的に膀胱が縮んで、勝手に尿が出てしまうからです。
この反射的な収縮は、本人の意思では止めることができません。
スウェーデンの約50人の赤ちゃんの追跡調査研究では、昼間の尿が全く漏れなくなる頻度は、3歳52%、4歳93%、5歳100%、夜間睡眠時の尿が全く漏れなくなる頻度は、同じく17%、63%、87%と報告されています。
知能も発達し、昼間起きている間は膀胱がふくらむとはっきりと尿意を自覚できるようになります。
2歳後半から3歳のこのころにトイレトレーニングを始めるのが平均的で、オムツを外す時間を増やしトイレでの排尿を誘導します。最初の頃、このようなオムツのない状態で、自然に尿意をもよおすと、子どもは膀胱の反射的収縮を抑える為に、尿道の括約筋(かつやくきん)を必死にちぢめて尿が漏れないようにしている様子を見せることがあります。このがまんの仕方は、おもらしが完全になくなるまで、しばらくの期間、普通にみられます。
尿を漏らさないでいるための「入門編」といえます。
子どもの様子には特徴があり、「座り込んでモジモジする姿」であったり、「おちんちんを両手で押さえている姿」であったり、「トイレに慌てて駆け込む姿」であったりします。
しかし、この無理な我慢の方法が続く期間は長くはなく、子どもの知能発達により別の方法が自然に習得されます。すなわち、大人と同様に、無意識のうちに反射的排尿を抑える神経が脳から膀胱に働くようになるのです。脳が膀胱の状態を常時監視し自動制御(自動抑制)する仕組みといっても良いでしょう。
この仕組みは、トイレに入って排尿しようと思った時だけ、働きを止め、スムースに尿が出始めるというわけです。いわば「上級編」の方法とも言えます。
このような排尿機能の発達には個人差があります。早ければ3歳で完成し、遅ければ7-8歳になってもまだ完成しないこともあります。遅い場合は、何らかの原因(基礎疾患)をみつけ治療する必要が生じます。
具体的には、就学年齢になっても、まだ昼間のおもらしを認める場合(あるいは、上述した「入門編」の特徴的な様子がみられる場合)は泌尿器科で専門的な検査と治療を行います。