小児の尿路感染
疾患の概念どのような疾患?
尿路とは、おしっこがつくられる腎臓(じんぞう)に始まり、おしっこの出口までを指します。
出口(①外尿道口、がいにょうどうこう)から順に→ ②尿道→ ③膀胱(おしっこを溜めるぼうこう)→ ④尿管(左右 2 本)→ ⑤腎臓(左右 2 個、内側は腎盂)の 5 つの場所から成ります(図:ここをクリック)。
感染はほとんどの場合、細菌(大腸菌に代表されるバクテリア)が外尿道口①から入り②→⑤の順に侵入してゆくことで生じます。そこで、上行性感染と呼ばれます。感染症としての診断名は、それぞれ順に①亀頭包皮炎(きとうほうひえん、男児)、②尿道炎、③膀胱炎、④尿管炎(単独では生じません)、⑤腎盂腎炎(じんうじんえん)となります。
原因がウイルスのこともありますが、ウイルス性膀胱炎(アデノウイルスやコクサッキーウイルスなど)以外のウイルス性尿路感染の診断は困難です。細菌性尿路感染は女児の 3 ~ 5% 、男児の 1% に生じるとされます。
症状どのように発見されるの?
尿路感染は、腎盂腎炎、膀胱炎、無症候性細菌尿の3つが基本形態です。
発熱は感染が腎臓に達していることを示します。膀胱炎だけでは熱は出ません。
腎盂腎炎の症状は高熱、腹痛、悪心・嘔吐、倦怠感などです。新生児や乳児では、黄疸(おうだん)、哺乳不良、体重減少なども診断のきっかけになります。腎臓自体に細菌感染が生じると、腎瘢痕(じんはんこん)と呼ばれる腎障害を生じることも問題です。早期診断と治療が大切です。
膀胱炎では、おしっこが頻回、痛みを伴う、出しにくい、といった症状がみられます。熱は出ず腎障害も生じません。
無症候性細菌尿は、ほぼ女児に限られます。感染症状がないのに尿中に細菌や白血球が検出されます。腎障害は生じませんが妊婦では放置すると症候性の尿路感染を生じることがあります。
亀頭包皮炎は男児に生じるおちんちんとそれを覆う包皮の間の細菌感染症です。赤く腫れあがったり、うみが出たりして痛みを伴います。熱は出ません。
診断・検査受診後の検査は?
臨床症状と尿検査(白血球や赤血球、細菌の確認)で診断されます。尿の培養検査は適切な抗生物質の選択や治療に欠かせません。自身で排尿できる場合は中間尿(出始めの尿を捨てて途中を採尿)で十分な検査ができます。一方、オムツのこども達に便利なビニールバッグの利用による採尿では、検査の精度が下がります。そこで、時にカテーテル採尿(外陰部の消毒後に細い管を入れて採尿)や膀胱穿刺(下部腹壁から直接注射器で採尿)が必要になります。腎盂腎炎では、血液検査 CRP (炎症指標の一つ)値の上昇が高い診断価値をもちます。
尿路感染を生じた全てのこども達(亀頭包皮炎は除く)に勧められる検査は、腎尿路の超音波検査です。
形態の評価を行います(他項:膀胱尿管逆流、水腎症、尿管瘤、尿失禁、神経因性膀胱などを参照してください)。
治療中や治療後にも検尿検査を繰り返します。必要に応じて別の画像診断を行います。
治療どうやって治すの?
亀頭包皮炎は抗生物質で治療し局所の清潔を保ちます。膀胱炎は抗生物質で治療します(1週間~10日間)。
排尿・排便習慣の見直しもとても大切です。共に外来治療です。腎盂腎炎は入院下に抗生物質の静脈内投与で治療開始します。解熱したら経口抗生物質投与に切り替え熱が上がらなければ外来治療に移行します。一般に全 2 週間の抗生物質投与で治療を終えます。尿路感染で大切なことは再発を防ぐことです。構造や機能に原因があると想定された場合には特に重要です。
POINT外来経過観察のポイント
かぜ症状のない発熱は、尿路感染の再燃を想定して検尿検査を実施することが大切です。受診時に尿路感染の既往を医師に話して検尿をしてもらいましょう。