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小児の鼠径ヘルニア

疾患の概念どのような疾患?

鼠径ヘルニアは、一般には脱腸(だっちょう)と呼ばれています。股の付け根の少し上あたり(鼠径部)から陰部にかけて膨隆する疾患です(図1:ここをクリック)。鼠径ヘルニアには内鼠径(ないそけい)ヘルニアと外鼠径(がいそけい)ヘルニアがあります。小児の場合は生まれつきの原因で発症するため、ほとんどが外鼠径ヘルニアです。女児に比べて男児に多いとされます。左右差については、頻度的には右のみ、左のみ、両側の順番ですが、女児ではあまり左右差はないとされています。

疾患の成因どうして起こるの?

男児の場合は、胎児期に骨盤部に発生した精巣が、在胎7か月頃に陰嚢まで下降を開始します。
これに伴って、お腹の中を覆っている腹膜が一緒に引きずられてくるため、腹膜が陰部に向かって突出をするようになります。この腹膜の突出は刀の鞘(さや)のような形をしているため腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)と呼ばれます(図2、ヘルニア側:ここをクリック)。通常この腹膜症状突起は出生前に閉鎖して消失します(図2正常側:ここをクリック)が、これがたまたま閉鎖せずに残ってしまうことがあります。女児でも同様のことが起こり、大陰唇まで突出した腹膜の鞘はヌック(Nuck)管と呼ばれます。腹膜症状突起が閉鎖せずに残っていると、お腹の中とつながっているため、泣いてお腹に圧がかかった時などにこの袋(ヘルニア嚢 ヘルニアのうと呼びます)の中に腸が飛び出し、いわゆる脱腸の状態になります。また、ヘルニア嚢の腹膜にくっついている臓器(卵巣・卵管や膀胱など)がヘルニア嚢と一緒におなかの外に引きずり出されることもあります。この場合は脱出ではなく滑脱(かつだつ)と呼びます。

診断・検査どのように発見されるの?

腸がヘルニア嚢に飛び出して鼠径部が突然膨隆することで発見されます。脱出した腸が自然に戻ってしまうことも多く、数回の脱出で確認されることが多いです。通常、腸が脱出しただけではそれ以外の症状はでないのですが、出口(ヘルニア門といいます)で締め付けられるて、血行障害を生じることがあります。この状態を嵌頓(かんとん)と呼びます。嵌頓すると膨隆部は赤みを帯びて固くなり、痛み・おう吐・発熱などを伴うようになります。放っておくと腸や卵巣が腐ってしまうことがあります。また、嵌頓を繰り返すと精巣を栄養している血管が頻回に締め付けられることで精巣が萎縮してしまうこともあります。

治療どうやって治すの?

脱出した臓器は徒手整復によって戻すことはできますが、袋が残っている限り脱出をくりかえします。早産児でない限り自然に治る可能性は極めて低いです。手術によってヘルニアの出口(ヘルニア門)をしばることでなおせます。手術は鼠径部の皮膚を1~2cmほど切開して行う従来の手術法と、臍から入れたカメラで観察しながらお腹の外から穿刺によってヘルニア門を閉鎖する腹腔鏡手術があります。再発は1%未満の確率で生じます。

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