小児の精巣腫瘍
疾患の概念どのような疾患?
小児の精巣腫瘍は成人例に比べて稀です。また組織型も成人例とは異なります。胚細胞性(はいさいぼうせい)と間質性(かんしつせい)、それ以外の3つに大きく分類されます。
胚細胞性の場合は停留精巣が危険因子となります(腫瘍発生率はソケイ部停留精巣では陰嚢内精巣に比べて3~8倍、腹腔内精巣においてはさらにその数倍に増加します)。腫瘍発生機序として2通りが考えられます。1つ目は停留精巣術後つまり精巣固定術後の腫瘍化です。2つ目は腹腔内精巣の小児期での見逃しによる腫瘍化です。ただし、これらは思春期以降の成壮年期になってからの発生になります。
小児精巣腫瘍のなかでは卵黄嚢癌(図:ここをクリック)が最多で、つぎに奇形腫の順です。間質性腫瘍にはLeydig細胞腫(ライディッヒさいぼうしゅ)、Sertoli細胞腫(セルトリさいぼうしゅ)などがあります。そのほかには、性分化疾患に発症する性腺芽腫(せいせんがしゅ)や血液疾患の精巣浸潤としての急性白血病や悪性リンパ腫などがあります。
他に注意すべき悪性疾患としては、陰嚢内腫瘤を主訴に発見されることのある傍精巣傍精索性横紋筋肉腫(ぼうせいそうぼうせいさくせいおうもんきんにくしゅ)嚢などがあります。
診断・検査どのように発見されるの?
触診上は無痛性の陰嚢内腫瘤を呈します。超音波検査は第一選択の画像検査です。病理結果を予測する質的診断も可能です。精巣腫瘍では反応性に陰嚢水腫を生じていることがあり注意が必要です。超音波検査とCT検査で病期分類を行い、治療方針を決定します。腫瘍マーカー(AFP、HCGβなど)の測定で病理結果の予測ができます。また各種マーカーの半減期(AFPでは5~7日間)を利用して、治療効果の判定や術後経過の観察をします。ただし、生後12カ月まではAFP値は生理的に高値を示すため、測定値と日齢、月齢を照合して異常値かどうかを判断します。
治療どうやって治すの?
悪性(卵黄嚢癌)の場合は高位精巣摘除(こういせいそうてきじょ)が主な治療法です。成熟型奇形腫などの良性腫瘍では、なるべく精巣を温存する腫瘍核出術、精巣部分摘出などを行います。卵黄嚢癌の場合でも病期がStageⅠ(転移なし)の場合は、精巣摘除のみで通常、抗ガン化学療法などは行わず、AFPの下降状況を観察しながら経過をみます。ただし、進行してStageⅡやⅢの場合は抗ガン化学療法が必要になります。
POINT外来経過観察上のポイント
腫瘍摘除後の腫瘍マーカーの下降状況が順調かどうか、再上昇してこないか、注意深く経過を観察します。化学療法が必要な状況になった場合も、将来の妊孕性が維持できるように、健側精巣への十分な配慮が必要です。